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作成:2006/08/18

英国ブライダルレポート

MC 恋塚 太世葉

URLhttp://www.h5.dion.ne.jp/~peewee 

E-mailpeewee@k6.dion.ne.jp

 

4/29-5/8のスケジュールで英国を外遊した。英国と言えば明治時代、日本がお手本とした国であり、赤いポスト、車の左側通行など、日本には実になじみの深い国でもある。食べ物にはこだわらないが家の庭の手入れにはこだわる、午前午後の休憩には紅茶を飲む、新築の家より念入りに手入れされた築100年の家の方が高価で人気がある。日本人には理解し難い所はあるがなんとも味のある国である。

イギリスは4つの王国からなる。イングランド王国、スコットランド王国、北アイルランド王国、ウェールズ王国これらの連合王国ということでグレートブリテン島と北部アイルランドの連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)→UKと呼ばれている。(これらを区別するため以降イングランドのことを英国と記すこととする。)

英国の結婚事情だが英国人の気質や特徴が大きく反映されている。英国人は、小さい時から親にべったりという文化はなく学校を卒業すれば家を出て独立をするのが一般的であり、子が親の面倒をみる(同居)という形態も殆どない。そのためかどうか解らないが私が感じるのは、英国人は他人とべったりというのが苦手な人種に見える。「他人とべったり過ごす」の代表閣が「結婚」ということになるわけだが、想像のとおり、離婚率もヨーロッパ一の高さになっている。

今回現地では結婚式に出会うことはなかった。日曜日は安息日で礼拝があり、平日はゲストを呼ぶのも大変ということで、結婚式の大半は土曜日に行われている。また、英国国教徒の挙式では自分の通っている教区で挙式を挙げることから、ロンドンのような町のど真ん中で結婚式に出会う確率も低い。

とは言え、白いウェディングドレス、段々のウェディングケーキ、新婚旅行や、日本でもおなじみのサムシング4&シルバーコインの発祥の地でもありウェディングの文化的な面を多く学ぶことも出来る。

今回は現地の教会、ブライダルサロンや、ドレスショップ等の取材、現地で購入した書籍などを元にレポートをまとめることにする。

 

恋塚太世葉(こひづかたせは) 

l         ブライダルMC

l         全日本ブライダルMCアライアンス 会長

l         全米ブライダルコンサルタント協会 認定プロフェッショナルウェディングヴェンダー

l         WeddingsBeautiful Worldwide 認定 ウェディングスペシャリスト

著書:ブライダル司会ハンドブック(杉並けやき出版)

ブライダル博士のハンドブック(杉並けやき出版)

        



 

1.        英国の宗教と結婚式

英国に限らず欧米のウェディングは宗教に根ざしているということが日本と大きく違うところである。言い換えれば本物の教会で挙式をしているということ。礼拝堂から窓の外に目をやればそこはお墓である。お墓を目の前にした結婚式、日本の感覚からすると異様でもある。

英国の人口は6000万人、第一宗教はキリスト教で3800万人(英国国教:2600万人、カトリック:580万人)、第二宗教はイスラム教である。よって、教会での結婚式は多いということになるが、英国の若者の間では「私はクリスチャンです。」と言いながらあまり教会(お祈り)に出かけることはなく、教会と言えば結婚式のお呼ばれとお葬式ぐらいということだ。(礼拝もお年寄りが中心)

家の宗教は仏教ですと言いながら葬式の時にしか利用しない日本人とかなり似ているところもある。

 

2.        英国の婚姻形態

英国、スコットランド、アイルランド、ウェールズ各々で婚姻に関する法律は異なる。英国に注目して日本と比べてみると、日本の婚姻は役所に婚姻届1枚を出すだけだが、英国はというと法律で挙式が出来るところが決まっている。

法律では、教会等宗教施設、戸籍登録所、国の認可を得た会場の3種類が認められている。挙式は親族のみの場合もあれば、友人達をたくさん招く場合もある。少人数で式を行ってもその後の披露宴パーティはたくさんの人を呼んで盛大に行うのが一般的である。

 

・教会での結婚式(英国国教会の式)

英国国教会はキリスト教の4大宗派の1つであり、教圏は英国、また英国の植民地統治されていた場所ということでとても広い範囲にあたる。英国国教会は聖書に忠実であり、マリアや聖人は崇拝の対象としない、また教会の十字架にはキリストが張付ていないなど、「最もカトリックに近いプロテスタントと言える。」英国国教会で結婚式を挙げる場合は、新郎新婦いずれかが英国国教会のクリスチャンであることが条件とある。そしていつも通う教区の教会で式を挙げることになる。

 

・戸籍登録所での結婚式

戸籍登録所(市役所)では、婚姻届の受理の他、市役所内に常設の人前式場にて挙式を執り行ってくれる(もちろん有料)。法律に基づく挙式となるが、新郎新婦はモーニングにウェディングドレス姿で臨み、家族を交えて厳粛に行われる。ロンドンであればケンジントン地区のケンジントンチェルシーなどで行うことが出来る。

今回小生はケンジントン地区のホテルに宿泊したためケンジントンチェルシーも散歩がてら覗いてきた。中に入ることは出来なかったが、CVICセンター(市民センター)には挙式場と、レセプション会場(宴会場)

があり、向こう1ヶ月の宴会のスケジュールが貼り出されていた。日本で言うところの市役所、公民館で結婚式&披露宴を行ういうことである。

@ケンジントンチェルシー

Aレセプション会場が併設

B宴会のスケジュールの貼り出し

 

・国指定の会場

ホテルであったり、マナーハウス(迎賓館)であったり、国の許可を受けた会場には戸籍登録所の職員が出張し司式者となって進行をしてくれる。

 

英国では、日本のように婚姻届1枚で婚姻手続きが片付くのではなく、教会で宗教的考えに則って式を行うか、戸籍登録所の職員が認めた形式の挙式でない限り、国は婚姻を認めないということである。

 

 

3.        英国スタイルの披露宴の進行

・列席者が席に着いたところで食事スタート。3皿程度の洋食プチコースが一般的である。

食事が終わった当たりで、進行係り(ベストマン)が進行し、新婦父、新郎、ベストマンの3名程度が挨拶、ベストマンの発声で乾杯を行う。

そして欧米人お得意のダンスタイムが始まる。最初ダンスを披露するのは主役の新郎新婦であり、これをファーストダンスと言い、欧米ではこれが夫婦初めての共同作業となる。

そして最後には全員で各々踊りだし盛り上がる。ダンスタイムの後はいよいよケーキ入刀となり、そのケーキをみんなで食べる(デザートの甘いものという位置づけ)。欧米ウェディングではこのケーキ入刀のセレモニーがが中締めとなる。そのあとにブーケトスとガータートスが行われ、時間のある人は引き続き盛り上がるという流れである。

 

 

4.        ウェディングプロデュース会社

英国のウェディングプロデュース会社は街中のあまり目立つところに見つけることは出来ない。

大半はwedding関連雑誌や電話帳(日本で言うところのタウンページ)から探しネットや電話でお店にアクセスする仕組みである。

英国の有名デパートであるハロッズ内の引出物コーナーとブライダルサロン(衣裳をコーディネイトするのがメイン)を覗いてみた。

ブライダルサロンと言うようなものではなく、各種手配を行います、というエージェント業務である。英語ではアニバーサリーギフトといい、何かの記念に皆さんへ配る贈り物を手配しますというものであり、

これがすなわちWeddigの場合は引出物となる。そのほか、衣裳屋さんの手配、旅行の手配、ウェディング保険の手配なども行っていた。

 

ウェディング保険(Wedding Insurance)について

日本では考えられないウェディング保険というものがある。これはウェディングに関する損害保険というもの。ここで言う損害とは何かというと、なんだかの理由で挙式を中止した場合支払いの肩代わり、指輪を紛失してしまった場合、手配していた衣裳屋、写真屋花屋ケータリング業者など式当日を前に倒産してしまった場合の保証などである。日本ではホテルなどを窓口として責任を持って手配を行うために安心だが、欧米では、独立企業のウェディングプランナーが新郎新婦へ業者の紹介のみを行うため、新郎新婦と業者とで揉める場合も想定できる。欧米ならではの保険と言える。

@ハロッズのウェディングデスク

Aハロッズのデスク風景

Bハロッズのドレスコーナー

 

 

5.        衣裳について

 英国は紳士の国ということで、先ずは男性衣裳から触れることにする。英国が生み出した衣裳として、フロックコート、モーニング、燕尾服、タキシードがある。つまり世界のスタンダードである。現在欧米の新郎の衣裳と言えば正装ということでモーニングである。日本でモーニングと言うと、媒妁人や父親のイメージがある。しかし英国のモーニングの着こなしは実に素敵である。ベストで個性を出している。ベスト1つでこんなにも素敵に着こなせるのかと感じた次第である。ところで日本の新郎衣裳としては、昭和40年代から現在まで、タキシード→燕尾→フロックコートと移り進んできた。今後日本の新郎衣裳だがフロックコートの流行が終わったら?次は間違いなくモーニングの時代が来ると容易に推察できる。

@ベストで上手に着こなしている

Aベストの襟はラペルと言う

Bベスト単体で売られている

 

一方、新婦のドレスだが、大半は予想通りオーダー物である。パーティ好きの欧米人にとってドレスは何着あってもいいのである。ウェディングドレスも今後も長く着られるデザインであったり、挙式後、お直しをしてパーティドレスにしたりという考えでオートクチュールの買取ドレスの割合は高い。

 

コットウォルトの衣裳屋さん

レンタルドレス中心のお店ということで貸衣装がお店の中にたくさん飾られているが実際はオーダーが多い。レンタルならばいくらだが、もう少し出せばオーダーが作れると言う戦略だろう。オーダードレスの値段もかなり幅があった。

@コトウォルトのショップ

Aドレスから演出品まであった

B飾り方が雑だった

 

@町のグッズ屋さん

ABrideは花嫁、Groomが新郎

Bリングピローの値段はピンキリ

 

@デパートのセルフリッジ内

A紙の種類はそれほど多くない

Bペーパーアイテムコーナー

 

 

6.        本屋さんのブライダルコーナー

日本の本屋さんで冠婚葬祭のコーナーを見ると新婦を対象とした結婚式当日までの準備本、お呼ばれしたときのためのスピーチ本、司会者のマニュアル本などで埋め尽くされているが、英国のWeddingコーナーで目にする本といえば、ベストマンのマニュアル本である。ブライズメイド等と同じく重要な役割りを果たすベストマン(新郎の介添えをしたり、教会への支払い、レセプションパーティでは挨拶や乾杯の音頭もとるなど行う)のノウハウ本がたくさん並んでいた。尚、ベストマンは新郎の兄弟、いとこ、恩師などが担当するものである。

ブライズメイド・アッシャーなどが参加するウェディングパーティ挙式についてはここでは詳しく触れないが、実に興味深いセレモニーである。(興味のある方には参考資料などお渡しすることも可能ですのでお問い合わせください。)

@ベストマンのマニュアル本

Aウェディングバイブル?

B新婦向けの本ももちろんあり

 

 

7.        その他

文化やトピックスとして以下を記載する。

 

         ビクトリア女王の結婚式

ウェディングプランナーの常識として押さえて置きたいことがある。現在、ウェディングドレスと言えばが白が定番であるが、これは1840210日のビクトリア女王の結婚式に起因している。他、新婚旅行の発祥、3段ケーキの発祥、これらもこの時代(産業革命でイギリスが最も元気な時代)に始まっている。

ビクトリア女王より昔の時代というと、王室のドレスは金銀色が一般的であった。18世紀から産業革命で潤った英国では、経営者を始めとする貴族は金余りの時代となり、服装も朝昼晩と違うものを着るなど贅沢三昧が始まった。その中でビクトリア女王は、清楚は白を選んだ。それは自然と民衆にも広まり、シルクを使った衣裳は産業革命時の国内養蚕産業の発展にも寄与したという。

 

         セントマーガレット教会

ウェストミンスター寺院隣のこじんまりとした教会。マーガレットはエリザベスUの妹の名前。教会内の展示コーナーにはマーガレットの結婚式の写真や、牧師が発行した、結婚証明書類などがあった。

@セントマーガレット全景

A教会内風景

Bアンソニーとマーガレット

@英国国教会の結婚式風景

A牧師が書く、結婚証明書類

BジョージXとエリザベス婦人

 

         セントブライド教会

小生の執筆本のブライダル司会ハンドブックなどでも取り上げているがウェディングケーキのデザインのモデルとなった教会(建物)がロンドンにある。st.Bride教会と言って和訳すると花嫁教会となる。

ケーキ職人がウェディングケーキのオーダーを受け、どんなデザインにしようか考えていた時、窓の見えた教会の鐘楼をモデルにケーキを作ったと言われているものである。

小生が200010月に訪れた時には改修中だったため、今回改めて訪問した。1F部分は礼拝堂、地下はセントブライド教会建立の歴史をつづった博物館になっている。

礼拝堂ではちょうどウェディングの下見に来ていた家族と牧師が打合せをしていた。

@高い塔がセントブライド教会

A教会内ではピアノがあった

B下見に来た未来の花嫁

 

・スタッグナイト(stag party)とヘンナイト(Hen party

これは結婚式の前夜の宴会のことで新郎は新郎の友人だけで、新婦は新婦の友人だけで、いわゆる独身最後の夜を楽しく過ごすパーティのことである。アメリカではバチュラパーティなどと呼ばれているが英国では新郎+新郎友人のパーティをスタッグナイトパーティ、新婦+新婦友人のパーティをヘンナイトパーティと呼んでいる。これらはかなり飲んだくれるパーティとなるようである。それようのパーティグッズもたくさん売っており、日本でいう披露宴の2次会以上のノリがある。結果挙式当日は二日酔いで式に臨む新郎新婦もいるようである。尚、Stagはおんどり、henはめんどりの意。

 

6ペンスコイン

花嫁の左足の靴にこのコインを入れて挙式に臨むと経済的に困らない家庭になる(裕福になる)という言い伝えのおまじないコインがある。

造幣は15511967年の間のみのため、現在は古銭として探し求めるしかないコインである。

今回ロンドンのアンティーク屋を中心にショップを回り買い付けを行った。

1ポンドが200円と仮定した場合6ペンスは10円ちょっと言う金銭的価値だが、古いものが大好きな英国人からすると値段は高額になることもある。様々なデザインや装飾があり、思わず買い込んでしまった。

 

現在小生が買い付け取引をしているショップはロンドン市ノッティングヒルゲート地区のアンティークショップである。この地区はアンティークショップがたくさん並ぶエリアであり、毎週土曜の朝は蚤の市も行われる場所である。まあ、英国は町自体がアンティークのようなもの。ちょっと歩けばすぐそんなお店に出会うことが出来る。

@ノッティングヒル地下鉄駅

Aアンティークショップのほうがいいものが見つかる。

Bポートベロー地区のショップ

C6ペンスコイン

A6ペンスコイン

B6ペンスコイン

 


 

         おまけ

街中ではたくさんのウェディングケーキのディスプレーを見ることが出来た。デザインは至ってシンプルだった。

 


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